精魂こめた粋の世界!そば打ち道場見聞記

トントントン…静けさのなか、凛とした小気味よいリズムが聞こえてきます。ここはふるさとメモリアル広場の一角、中山間施設のホール…蕎麦切りの音です。 5人の修行者と2人の師が挑む真剣勝負の道場、町内外の参加者5名と蕎麦打ち有段者の藤井ご夫妻が、蕎麦粉から「そば」を産み出す手品のような作業に没頭していました。

引きたて、打ちたて、茹でたての「3たて」がそばの極意とうかがいましたが、作業手順は①水回し②延し③切り④茹での4工程です。

先ずふるいにかけた蕎麦と小麦の粉を均等にきれいに混じり合わせて水回しが始まります。これが一番大事な作業でこねては駄目で丁寧に素早く優しく攪拌するのがこつ、水回しは絞り込んだ玉(どう)が丸く花びら模様に均等になる菊揉みで綺麗なお饅頭に仕上がりました。

このように①から④まで全てが大事な息の抜けない作業の連続だと端から納得です。

②延しは丸延し、角だし、本延し、畳みの4工程でくっつかないように微妙な打ち粉の加減が勘どころのようです。③切りは延し台の上に切り板をのせ打ち粉を振ってすべりを良くし、畳んだ蕎麦をそっと載せて小間板をあて、手前から押し出すように切り落とし、包丁を左へ傾けてずれた間隔が、切り幅になります。④茹では大きな鍋で、沸騰したお湯と蕎麦が一緒に鍋の中で回転するように茹でて、時間は生粉、九一、二八の別や麺の太さによるようですが、乾麺よりはかなり短い時間です。

釜前が一番難しいともいわれ、手早く麺をすくいだしてたっぷりの水に浸してからザルに置いてコシが出るように冷たい面水をかけて麺をしめ、又たっぷりの水の中で泳がせるようにしてぬめりを洗い、終わったら笊に盛り付けます。

私は「3たて」の茹でたての方がもっぱら待ち遠しく、早速、新蕎麦の喉越しと風味を楽しませて戴きました。はじめはタレにつけずに生そばで、次は一塩ふって味わいましたが、枯淡の風味の中に蕎麦の力が漲り、食の奥深い覚醒がもたらされます。

二八(小麦2:蕎麦8)から九一(蕎麦9:小麦1)生粉(きこ・蕎麦10割)まであり、各人各様の色あいと麺の表情が違い、驚きです。ご夫妻が同じ材料、同じ設備で打っても違い、その人のそば愛がそのまま結果にでるようです。あなたのソバがいいなどと言われたことあったかなあ…

デザートの蕎麦湯の風味も格別!甘いお乳の味がして何度もお代わりをしてしまいました。中山間施設にはそば打ち道具キットもあり、雄武町観光協会の観光体験プログラムとしてそば打ち体験を企画予定です。皆さま是非ご期待ください。